うまくいかない要求定義

なぜ、要求定義はうまくいかないのでしょうか?

今回は、システム開発においてよく失敗する原因となる要求定義について、その問題を見ていきたいと思います。
なぜ、要求定義はうまくいかないのでしょうか?
その理由のひとつとしては、「Vol.1 失敗するシステム開発」で書いたように業務開発プロジェクトの存在が不明確なまま進んでしまい、その中でコンピューターシステムをどのように活用するかということが曖昧なまま進めてしまうため、システムに対する要求が不明確になってしまうのです。さらに困ったことに、システム開発会社もあまり提案をせず、ユーザー企業から要求が出てくるのを待ってしまっていることもしばしばあるのです。

 

契約的な問題

そこで、もっとこのことを考えてみると、契約問題もはらんでいることがわかります。従来の比較的規模の大きいソフトウェア開発で一般的に使われているウォーターフォール開発*注1では、ソフトウェア開発の最初の段階に一定期間の中で、たとえば一ヶ月の間にユーザーからシステム要求を出してもらい、それを元にしてシステム開発会社がシステム要求仕様(要件仕様書)を作成します。そしてそれを元にシステム開発の受注費用が決定されます。

  • *注1代表的な開発モデル。要求定義、基本設計、詳細設計、実装、テスト、移行といったフェーズ(工程)に分割し、順次段階的に開発を実施する手法。まえの工程の成果物に基づいて次の工程に進む。

この時、実際には当初からシステム開発費が決められていることが多く、その予算の範囲内で、ユーザー企業(発注側)とシステム開発会社(受注側)との間で要求を受ける・受けないといった交渉が行われることになるのです。このようなやり方の問題は、図1のように、ITシステムのビジネス上での活用方法がわからないにもかかわらず、無理やり要求を出してしまうことです。その結果、ITシステムが提供する機能の半分も使われないといった状況が起こるのです。

ユーザーが要求をしっかり持っているわけではありません。なぜなら、ユーザーは業務をどのように行っているか、ということはわかっても、それをどのようにITを使って効率化するかや、新しい価値を生み出す方法はわからないのです。また、システム開発担当者についても、ユーザー企業の業務上の問題・課題を理解しているわけではないため、ITシステムをどう活用すべきか分からないのです。

図1
図1 ユーザー企業とシステム開発会社の不幸な関係

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要求の定義と要求の評価では見ているところが違う

システムに対する要求とは、いったい何なのでしょうか?
このことを深く追求していくと面白い様相が見えてきます。それは、要求定義がうまくいかない大きな原因に繋がるものです。
さて、これを説明するために4コマ漫画を考えてみました。
この漫画の世界には、釣りとか網で魚を取るという習慣がなく、魚は買って食べることしかありませんでした。

「うまくいかない要求定義」の巻!

ぱんぱん&トリッキーの4コマ漫画

この漫画でぱんぱんくんがユーザー企業の担当者、トリッキーくんがシステム開発の担当者です。こういうことがシステム開発では、しょっちゅう起こるのです。
この事をもう少し図2を使って分析してみましょう。
この図のように、元々のぱんぱんくんの要求は「魚を食べたい」です。そしてその手段としては、魚を買うことではなく、魚を取るということは、トリッキーくんも理解していました。


図2
図2

さて、もう一度、4コマ漫画を見てください。この漫画では、第1レベルでユーザーであるぱんぱんくんからの要求を聞き、その要求仕様として、魚を木と糸と針金を使った方法で取るという仕様を作成しました。しかし、その要求仕様に基づいて実際に作った釣り竿を見たぱんぱんくんは、自分の要求したものとは違うと言っているのです。
つまり、ここで何を言いたいかというと、要求を定義する段階と、実際に作り終えて要求を評価する段階では、見ているところが違っているのです。要求を定義する段階では第1レベルの目的と手段を見ており、要求を評価する段階では第2レベル目の手段を見ているのです。
そうです、契約段階で決めた事よりも、もっと掘り下げたところで、契約内容の評価をしてしまっているのです。これでは意見が一致するわけありません。

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要求は目的と手段が連鎖した全体的な系列のことを言う

この4コマ漫画で分かることは、本来ならば要求とは、手段が連鎖した全体的な系列を理解しなければならないということです。しかし、実際には要件定義は上のレベルで合意した後契約を行い、開発を終えた評価の段階では最下位の手段のレベルで評価してしまっています。
ぱんぱんくんは、最初の段階では、網のイメージをはっきりと説明できませんでした。また、トリッキーくんも釣竿を考えたのですが、針金で針を作ってしまったり、浮きもない竿でどうやってつればいいかも分からないまま開発に着手しました。もっと最初から、結果イメージが予測できていればこういうことになりにくいはずですね。


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